ナレッジマネジメントの成功事例や失敗事例を導入効果と併せて徹底解説

最終更新日:2022年8月2日
このブログはAIを活用したFAQシステム『sAI Search』を提供する、株式会社サイシードが作成しています。最新の事例や企業での活用方法を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください!
知識を言語化・共有しようとするナレッジマネジメントですが、これまで多くの企業が経営に落とし込もうと実践し、失敗に終わっています。
それらの企業には何が足りなかったのか?一方で、花王やキーエンスのようにナレッジマネジメントを活用できている企業にどのような工夫が見えるのか?この記事では、ナレッジマネジメントの成功事例と失敗事例から学ぶべき4つの重要事項についてご紹介します。
記事の最後ではナレッジマネジメントツールの比較検討に役立つ「高速高精度!次世代のFAQ検索システム『sAI Search』概要資料」をプレゼントいたしますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね!
ナレッジマネジメントの失敗事例
まずは過去の企業がどのような背景でナレッジマネジメントに失敗してきたのか、失敗事例を参考に振り返ってみましょう。
- 運用の仕組みが未整備で、誰も活用しなかったA社
- 膨大な量のデータベースが乱立し知識を参照できなくなったB社
1, 運用の仕組みが未整備で失敗したA社
A社はナレッジマネジメントの概念が普及し始めた1990年代に、当時流行りだった「ナレッジマネジメント経営」を自社でも落とし込むべく、知識をデータベース化するためのシステムを導入しました。
当時導入したシステムに何ら問題はありませんでしたが、A社の場合はナレッジ運用の仕組み自体に問題がありました。ナレッジの定義方法や、ナレッジを登録した後のフローなど、運用の仕組みが未整備のままマネジメントしてしまい、誰もシステムを活用できず、やがて廃れてしまったのです。
【失敗した理由】
・システム導入だけ行い、運用ルールは特に定めずに実装
・社内にナレッジ共有の文化が浸透せず、ツールが活用されない結果に
→ナレッジ共有するメリットが伝わらなかった
→ナレッジ共有が面倒に感じた
ナレッジマネジメントには下記のような、組織立った運用の仕組みが必須です。

ナレッジマネジメントは単にツール導入だけで達成できるものではありません。そこには「業務内容を細部まで細かく理解した人材による献身」のもと、社内一丸となって情報を共有する文化や仕組みを創り上げる必要があります。
出典: 『この情報共有が利益につながる』(ダイヤモンド社、2004年)
2, 膨大なナレッジを整理できず、誰も活用できなくなったB社
複数の子会社を抱えるB社では、ナレッジマネジメントに複数のグループウェアを導入し、規定のナレッジ共有フローに従って毎日膨大な量のデータを蓄積し続けました。
しかしナレッジマネジメント導入から数年後、B社のグループウェアには数千以上ものデータベースが乱立してしまいます。
情報整理されず、形式もバラバラな状態のデータベースが完成し、どの情報がどこにあるか誰も参照できなくなりました。
【失敗原因と課題点】
・データの記述や整理のルールが未整備
・蓄積されたデータが活用不可能になった
・導入したシステムの機能が乏しかった
B社がナレッジマネジメントに失敗した理由は、ナレッジマネジメントの土台となる理論として大成された「SECIモデル」のうち、連結化のプロセスが欠陥していたことだと考察できます。

B社には「共同化」「表出化」段階で蓄えられた膨大なデータベースを「連結化」する仕組みがありませんでした。その結果、ただ情報が蓄積されるだけのデータベースとなってしまい、誰もその情報を活用できなかったのです。
データベースに蓄えられたナレッジは活用されて初めて意味を持ちます。データを入力して終わりではなく、それを「簡単に取り出し」「組み合わせ」「活用する」仕組みまで考える必要があります。
ナレッジマネジメントの成功事例
次に、ナレッジマネジメントを企業経営まで落とし込めている事例を見ていきましょう。どの組織もうまくマネジメントするための工夫が施されています。
- 「お客様からの声」をナレッジ化し、商品開発に役立てる|花王株式会社
- ナレッジマネジメントシステムを一元化し、業務効率化| auコマース&ライフ株式会社
- 全社2万人の情報資産を蓄えるコンサルティングファーム|マッキンゼー
- マーケティング職でのナレッジ共有|株式会社キーエンス
- 富士フイルムビジネスイノベーション(富士ゼロックス)
1,「お客様からの声」をナレッジ化し、商品開発に役立てる|花王株式会社
ヘルスケア商品を提供している株式会社花王では、マーケティング・インテリジェンス・システム(MIS)や、「花王エコーシステム」などにより、顧客の声を商品開発やサービス向上に直結させる仕組みを導入しています。
花王ではサポートデスクへ寄せられた顧客からの声をナレッジマネジメントシステム上にデータベース化し、商品開発部がいつでも参照できる状況にしています。
墨田区にある、花王・すみだ事業場には生活者コミュニティーセンターがあり、ユーザーからの問い合わせが年間22万件寄せられる。ハウスホールド研究所にユーザーの声が届けられ、商品検索することにより最新のユーザーの声を閲覧することが出来る。
「カンブリア宮殿」 2017年8月17日(木)放送内容
『主婦感動!掃除や洗濯が…驚くほど楽になる!花王の大進化』
開発部門はナレッジデータベースを参照することで、ささいな顧客ニーズを取りこぼさずに商品開発へ打ち込めます。
その結果これまでに無かった便利な商品開発に成功し、「キュキュット クリア泡スプレー」や「アタック」、「バスマジックリン」などに代表されるメガヒット商品を売り出すことに成功しました。
2, ナレッジマネジメントシステムを一元化し、業務効率化| auコマース&ライフ株式会社

ナレッジマネジメントは社内問い合わせ業務やコールセンター業務の効率化にも貢献します。
「au PAY マーケット」や「LUXA」など、複数の総合ショッピングサイトを手掛けるauコマース&ライフ株式会社では、合計3つの業務ツールを必要に応じて使い分けており、問い合わせ対応に膨大な時間を割いていました。
そこで導入・統一したツールがサイシードのFAQシステムであるsAI Searchです。同時に顧客対応フローを一新することで、問い合わせ対応後の処理時間を40%削減できました。
導入前 | 導入後 | |
利用システム | Excelなど、3つのツールを併用 | コールセンター型 sAI Search |
利用方法 | 共有フォルダにアクセスして検索、対応履歴は別ツールへ入力・管理 | オペレーターが専用のシステム画面にて「問い合わせ内容の検索」から「ログの記録」まで一気通貫でこなせるように |
業務の変化 | 問い合わせ業務中に複数のデータを検索 記載されている内容は自分なりの言葉に置き換えて返答し、履歴は対応後に手入力する | タグ検索機能とカテゴリ検索機能を活用することで、検索から履歴記録までの流れをほぼクリック操作だけで完結できるように 対応後の後処理時間が40%削減された |
オペレーターはAI搭載型のFAQシステムを利用することで、顧客対応中にも効率的にマニュアル参照できるようになりました。強力なAIエンジンによって下支えされている検索機能のおかげで、欲しい情報をすぐに入手できるようになったのです。
3, 全社2万人の情報資産を蓄えるコンサルティングファーム|マッキンゼー
社員の生産性が売上に直結するコンサルティングファームでは、 プロジェクトを通して獲得できた知見をファーム全体の資産とする仕組み(=ナレッジマネジメント)が必要不可欠です。
プロジェクト単位で業務が回るコンサルティングファームでは、膨大な量のリサーチデータや提案書が蓄積します。
マッキンゼーでは新しい提案ごとに過去の事例を引き出し、その都度参照することで、コンサルタントが無駄なく効率的に業務出来るようにナレッジマネジメントされているそうです。
マッキンゼーのナレッジマネジメントを下支えする強力なシステム
マッキンゼーに日々蓄積されるナレッジは、Know と呼ばれる独自のシステムで管理されています。プロジェクトにアサインされたコンサルタントは Know から過去の事例・知識を参照し、必要に応じてナレッジ作成者に連絡することも可能な様です。
【Knowから参照できる主な情報資産】
・業界の市場規模
・業界をけん引しているプレイヤー情報
・バリューチェーン など
マッキンゼーにおいてナレッジマネジメントが機能している成功要因としては、次の3つがあります。
- ナレッジの形式化/フォーマットの統一
- ナレッジ共有のインセンティブ
- ナレッジの管理ができる強力なマネジメントシステム
この例からもわかる通り、社内のナレッジマネジメントを成功させるためには、単にシステムを導入するだけではなく、社内にナレッジ共有文化を浸透させる仕組みづくりまで必要になります。

4, マーケティング職でのナレッジ共有|株式会社キーエンス
営業力が高いことで有名なキーエンスですが、WEBマーケティングにおいてもお手本として語られることが非常に多いです。実はここにもナレッジ共有の仕組みがありました。
キーエンスでは、営業や開発で共有された膨大なナレッジをもとに、顧客ニーズに沿ったホワイトペーパーなどのコンテンツをコンスタントに作成しています。これまでに作成されたコンテンツは40000点以上に及び、そのほとんどが営業部門が現場で集めた顧客のニーズや事例などのナレッジをもとに作成されています。
キーエンスでは全社販促にフィードバックすることで、コンスタントに作成し続ける仕組みが出来上がっています。
ナレッジ共有だけでなく、ナレッジ募集文化もあるキーエンス
そしてキーエンスが独特なのが、「ノウハウの発信」を求めるだけでなく「ノウハウの募集」もまた同じくらい求めている点です。
例えば次回商談する会社の業界の類似事例やノウハウを募集をすると、全国の営業マンが経験を元に回答をしてくれる文化があります。
ノウハウを全国の営業マンから募集することによっって商談での受注率が大幅に向上しているそうです。
営業部門でのナレッジマネジメントにキーエンスが成功した理由
ナレッジマネジメントの中でも、営業部門で行うものはとりわけ難易度が高いとされています。営業職は組織内競争によって売り上げを伸ばすことが多い職種です。したがって、他の職種と比べてナレッジ共有の文化が根付きにくいという課題があります。
以上の課題に対して、キーエンスでは営業成果とナレッジ共有を5:5の割合で人事評価することで、営業マンが積極的にナレッジを共有していく文化を作り出しています。
社内にナレッジを共有する文化を作っていくためには、単に上司から部下に対して「ナレッジを共有するようにしなさい」と言ってもあまり効果はありません。
キーエンスの人事評価のように、営業マンがナレッジ共有に対して明確にインセンティブを感じることができるようにすることで、初めてナレッジ共有の仕組みが機能し、文化として醸成されていくんですね。
5, 富士フイルムビジネスイノベーション(富士ゼロックス)
富士ゼロックスでは、社内に「何でも相談センター」と呼ばれる営業からの問い合わせに何でも答える部署が内在しています。これは公募で自ら手を挙げた営業経験者が担当しており、相談員は1か月に2,000件もの相談に答えるそうです。
相談センターに寄せられた質問と回答は、ただちに50のカテゴリーに区分され、データベースに保存されるようになっています。データベースは全て社内公開されており、営業スタッフだけでなく全社員が閲覧可能です。
有志の相談員によるナレッジマネジメントの2つの効果
富士ゼロックスのナレッジマネジメントには、2種類の期待できる効果があります。
1つ目に、営業マンの業務効率化があります。
相談員の全員が営業経験のある社員であることから、質問者は自分で疑問を調べるよりも効率よく業務できるようになります。1人あたり3時間20分もの業務削減効果があったそうです。
2つ目に、社員が様々な知識を身に着けられるようになる効果があります。
これは質問の主体である営業マン自身が新たなナレッジを獲得することから生まれる効果でもありますが、質問に答える「何でも相談センター」の営業マンにも利があるようです。
富士ゼロックスでは相談員が社内の仕組みや人脈・情報のありどころなどを理解し、再び現場へ戻った際、より高いクオリティのマネジメントや営業活動ができるように設計されています。
【ナレッジマネジメントの成功要因】
・ナレッジ管理者が自発的に参加している
・部門公開でなく全社公開にしている
・質問者だけでなく、相談員もキャリアアップできる仕組みがある
ナレッジマネジメントの成功に必要な4つのポイントまとめ
ここまで紹介したナレッジマネジメントの成功事例を踏まえ、ナレッジマネジメント成功に必要なポイントを4つご紹介します。
- ナレッジの定義
- ナレッジ共有の社内風土
- 高性能なナレッジマネジメントツール
- ナレッジマネジメント導入を下支えする外部組織
1, ナレッジの定義

ナレッジの定義は明確に行う必要があります。どのような情報をナレッジ化し、共有するか見計画な場合はマネジメントに失敗してしまう可能性が高いです。
【定義する対象】
・ナレッジマネジメントの目的(短期間で見直せるKPI)
・ナレッジの共有方法
・ナレッジの共有フォーマット、形式
・ナレッジの共有フロー
業務のどの項目をナレッジ化するのか、これからマネジメントする情報を明確にしましょう。同時期に、どのようなフォーマット/フローでナレッジ共有するかも決定します。
2, ナレッジ共有の社内風土を整える
ナレッジ共有の社内風土を整える努力も重要です。先に挙げたマッキンゼーの成功事例では、そもそも社内に「人を育てる」という全社員共有の価値観が育まれていたことも成功要因としてありました。
企業文化を大きく変容させる必要があるなら、ナレッジ共有に具体的なインセンティブを設けることも有効です。
キーエンスはナレッジ共有頻度を人事評価に組み込むことで、営業組織でのナレッジマネジメントに成功しました。
3, 高性能なナレッジマネジメントツール

社員が知りたい情報をすぐに引き出せるような強力な検索機能を持ったツールや、シンプルなUIで設計されている使いやすいツールの導入もポイントとなります。
いくら社員が情報資産を作り出しても、それらを気軽に引き出し・参照できる仕組みが無ければ役に立ちません。
例えば、検索の際にタグ・カテゴリなどで絞り込みができるツールを導入することや、AIエンジンを搭載しているツールを導入することが具体策としてあります。
4, ナレッジマネジメント導入を下支えする外部組織
ナレッジマネジメントに知見のある外部組織を、チームに組み込むこともポイントの一つです。
これまでに紹介した成功のポイントは、どれも実用化の難易度が非常に高い項目となっています。どのようにナレッジを定義し、どう情報共有の文化を醸成するか、自社に最適なソリューションを導き出すためにはナレッジマネジメントに詳しいコンサルタントを採用しましょう。

ナレッジマネジメントツールに関する相談も承っています。
ナレッジマネジメントは全社一丸となって行う規模の大きいプロジェクトです。
弊社では、その下準備すべてを一気に行うのではなく、まずはナレッジを蓄積させるところから、段階的に・時間をかけて準備していくことを推奨しています。
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